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ニューヨークでホームレスとして生活した日本人境セイキが見て感じたありのままのアメリカ
by seikisakai
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境セイキ
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人の住むところ(1)
人の住むところ(1)_b0073406_1257639.jpg「にーちゃんな、なんばしよっよね(お若いのないをしてるんだい)?」

 仕事を終えてから出発したキャンプ。キャンプ場に着い時にはもうとっくに午後十一時をまわっていた。手際よくテントを張り、飯の仕度に取りかかる。
「カチ、カチ、カチ、カチ……」
 闇に消えていく小さな音。その音に反応でもしたかのように隣のテントからオッチャンが出てきた。そうは言っても、たぶんいまのぼくとそう変わらないくらいだったと思う。それだけ僕が若かったということ。川から鍋に水をくんできてレトルトのご飯とカレーを放り込みカセットコンロの火を点けたところだった。
 キャンプが好きだ。

 キャンプが好きだからホームレスになったわけではなく、僕の場合もご多分にもれずホームレスになったからキャンプ生活を送っていただけ。約六年間を都会のキャンパーとして送った。それは長いと言えば長く、短いと言われればそう言えないこともない。どうだっていい。
 そんな暮らしをしていたせいか、それとも身体の奥深くに眠っているキャンパーの血が騒ぐのか、ここ数年どうしようもない習性を自分が持っていることを感じる。いつだって、どこにいたってそいつは頭をもたげてくる。なにかを探している。探したからといって<どう>なるというわけでもなく、するわけでもないのだけれどいつもキョロキョロしている。
 止まらない。習性とは本当に怖いものだ。


 マンハッタンを歩いていても、日本へ行っても、ヨーロッパをうろついていても僕の目はたえずそれを探している。
「どこかキャンプができそうなところはないかな?」
 とりわけ木が目に入るとその感覚が鋭くなる。
「あそこは斜面だからよくないな」
「水はけが悪そうだ」
「今の季節はいいけど、葉が落ちてしまったら丸見えだな」
 僕の中で木とキャンプは直に近い形で結びついている。
「ニューヨークでテントを張れる所は?」ときかれたら
「まず木を探してみるといい」、一瞬の迷いもなく答えることと思う。探せばまだある。もちろん私有地に属するのだけれど。それがブルックリンやクィーンズであればよりどりみどりだ。なんせ僕のホームレスの生活のほとんどは、ビルの軒下でもなく、段ボールでもなく、シェルターでもなかったから。もちろんそれらも一通り経験はしたけれど、やはりメインはテントだった。

(つづく)


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by seikisakai | 2006-06-01 12:57 |
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